BBRK 21-02-11


DSC-WX800を配信カメラにする  

いわゆるコンデジ SONY DSC-WX800(以下、WX800と略す)を配信カメラに使えるかどうか検証してみました。

在宅勤務期間や Zoom呑み会などの機会が増えてくると、配信に使うカメラが気になってくるひとも少なくないのではないかと思います。そんな人に向けてのめもめもです(笑)

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■Imaging Edge Webcam編

USBケーブルで PCと接続するだけで、WX800が Webカメラになるという SONY公式アプリ「Imaging Edge Webcam」です。

結論から言うと、品質が良くなくて、かな〜〜りイマイチです。
WX800でも こちらのYouTube の結果と同じような感じでした。
個人的には使えないなぁという感想です。
まぁ、WX800内のソフト(= すなわちファームウェア)は変更せずに PC側だけで対応しているので限界があるのでしょうね。

では、定量的な確認です。
VLCメディアプレイヤーはストリーミングデータを再生できるので、再生しつつコーデックを見てみたら こんな 感じ。
フレームレートは 30.000030。映像の解像度は 1024x576でした。
解像度が 1024x576固定なのは Imaging Edge Webcam の制限事項として記載があるので既知でしたが、フレームレートはカメラ側の設定が 30pでも 60pでも同じ 30.000030でした。

カクカク感の原因は 30pの影響とは思えないので、次はコマ落ち具合を確認してみました。
方法は、EDIUS上に表示した TC画面を WX800で写し、Imaging Edge Webcamソースを OBS Studioで取り込んで録画。それを再生して確認です。
結果は、なんと、2つのフレームが同じ絵でした(苦笑)
30fpsで映像データは送られてきていますが、中身は同じ絵が2フレームずつダブって入っているのです。
つまり、2フレームに 1フレームは表示されていない絵が発生しているということです。これがカクカク感の原因のようですね。

そんなわけで、Imaging Edge Webcam のイマイチなところをまとめます。

追加ハードウェア不要で、USBケーブルで PCと接続するだけでお手軽に出来るということ、SONYの公式アプリなので品質も大丈夫だろうと期待していたのですが、でんでんダメダメでした(苦笑)

そうそう、気付いたことを書いておくと、Imaging Edge Webcam では、手ぶれ補正が弱くなります。まぁ、手持ちで Webカメラする人は居ないと思いますけど(笑)

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■HDMI編

現時点での「Imaging Edge Webcam」は使えないと判断しましたので(苦笑)、次はオーソドックスに HDMI出力をキャプチャー機器を通して PCに取り込むケースです。

▼まず、配信カメラにとってキーとなる仕様は下記と考えます。
1. 録画スタンバイ状態でカメラから HDMI出力が可能か。
2. HDMIパススルー(HDMIクリーン出力)が可能か。
3. この状態を長時間維持できるか。
4. USBなどから電源を供給しながら、この状態を維持できるか。

▼WX800 実機にて確認した結果は下記。

1. 録画スタンバイ状態でカメラから HDMI出力が可能か: ○
ちなみに HDMI端子は microHDMIです。

2. HDMIパススルー(HDMIクリーン出力)が可能か: ○
HDMIパススルーの設定は、MENUボタン セットアップ3 HDMI設定 HDMI情報表示を「なし」。
キヤノンのコンデジのように、データ表示は消せるが顔検出の四角い枠が表示されてしまう…ということもなく、問題のないクリーン出力となる。
ちなみに、これを「あり」にすると液晶がオフになり、HDMI接続側に全てが表示されるようになります。

3. この状態を長時間維持できるか: ○
何時間でもいけそうです。3時間は出来ることは確認しました。

4. USBなどから電源を供給しながら、この状態を維持できるか: ○
給電マークが表示されバッテリーの消費はなく、3時間経過してもバッテリーマークは満タンのマークのまま。
メニューで USB給電が「入」になっていることを確認しておく。

なんと、満点!! すばらしい〜(笑)

しか〜し、唯一にして最大の欠陥があるのですな。
それは、三脚穴と HDMI出力端子の距離が近すぎて、(おそらく全ての)雲台/クイックシューでは HDMIケーブルを繋いだ状態で三脚に固定できない、という点。これ非常に残念。
蛇足ですが、RX100 でも初代モデルは同じ構造(RX100M2 以降、HDMI端子はカメラ側面に移動)で、ソニーはこういうところを軽視しているのが残念ですな。ホントに惜しい!!

▼調整できる項目は?
HDMI出力中に液晶に表示される画面は こんな 感じ(もちろん、HDMI出力映像には黒枠も情報も表示されていません)。「NO CARD」は SDカードが入っていないことを示しています。
「MENU」ボタンや「Fn」ボタン、ダイヤルを使うと、撮影パラメータが弄れます。
家庭用ビデオカメラよりも、めっちゃ細かく調整可能なことに驚きました(笑)
調整可能な項目は下記。動画撮影時に調整できるものは HDMIパススルーでも調整できて反映されるということです。
・ホワイトバランス
・シャッター速度
・絞り
・露出補正
・ISO
・ピクチャーエフェクト
・クリエイティブスタイル
・測光モード

ホワイトバランスはプリセットはもちろん、「色温度・カラーフィルター」を選べば 100K単位で設定可能。
残念ながら AF は MF にはできないようです。

▼どのくらい連続使用が可能なのか?
連続撮影して本体の温度が上昇しすぎると、勝手にパワーオフする仕様がありますので、温度の上昇具合は非常に気になると思います。
周囲温度20℃にて 3時間稼働後のカメラ本体の温度を触って確認したところ、軽く暖かい程度でした(動画モード、XAVCS HD 60p 25M、SS = 1/60)。
ただし、バッテリーが充電完了状態から開始しましたので、充電機能がほとんど働いておらず、その分の発熱が少ないことも温度上昇が少なくて済んでいる可能性があります。
念のため、メニューの「自動電源OFF温度」は高に設定しています。

▼それでは最後に、画質について確認。
動作環境ですが、HDMI映像のキャプチャーには、すっかり定番となっている CAM LINK 4K を使用。
このデバイスは HDMIから電源供給されて動作するのですが、カメラを USB給電させて問題なく長時間動作できています。
なお、PC側(Windows10 バージョン20H2)には CAM LINK 4K用のドライバは何もインストールしていないです。

CAM LINK 4K の映像を OBS Studio にて表示したり、録画して確認。
カメラ側の設定は下記で確認。
・記録方式: XAVC S HD
・記録設定: 60p 25M と 30p 50M

シャッター速度は fps の逆数に合わせるセオリー通りが良さげです。
30p のときに 1/60 を設定することはできますが、パラパラ感が残像感を増幅してしまうので、30p のときは 1/30 を選んだ方がいいです。
オススメは 60p で 1/60 です。当たり前ですが、30p に比べ、断然スムーズです。
Web会議なら 30p でも十分と思いますが、配信ライブなど、人物が左右に揺れる程度であっても動きがある場合は 60p が良いですね。配信ネットワークの帯域に余裕があれば 60p をオススメします。
ちなみに、シャッター速度を指定するには、「動画モード」の「シャッタースピード優先」にします。もちろん「マニュアル露出」でも可能です。

あと気付いた点を書いておくと、カメラの「モードダイヤル」は「動画モード」にしたほうがいいです。AFが動画向きの緩やかな動作に切り替わるのと、手ぶれ補正も動画向きに変わります。

映像のノイズにも触れておきましょう。
やはり室内では気になりますね。まぁ私の場合、比較対象が FDR-AX700 なので(笑)、そりゃ気になりますわな〜(爆)
Webカメラに比べれば解像感は大幅に改善されますし、なんと言っても調整でベストにもっていけますし、オートも結構優秀なので、ちゃんとした(バランスの取れた)絵になるので、十分に導入する価値はあると思います。


DSC-WX800を配信カメラにする(遅延測定編)  

次のバリエーションにて遅延時間を測定してみました。

データパスのバリエーション:
・USB → PC(Imaging Edge Webcam)
・HDMI → PC(CAM LINK 4K + Intensity Pro 4K)

PCでの取り込みソフトのバリエーション:
・OBS Studio Version26.1.1(64bit)
・VLCメディアプレイヤー Version3.0.12

カメラ設定のバリエーション:
・30p = XAVC S HD 30p 50M
・60p = XAVC S HD 60p 50M

時間測定の方法ですが、定番である TC表示を使いました。
EDIUS上に表示されるTCを WX800で撮影し、それをPCに入力し、EDIUSと取り込みソフトの画面を1枚にキャプチャすることで遅延時間(フレーム数)を出します。

Data PathViewer30p60p
USBOBS1111
VLC1919
HDMIOBS53
VLC表示不可表示不可

VLCプレイヤーでの調査は参考まで。VLCって何でも再生できるんだな〜ということで興味本位で測定してみました(笑)
「表示不可」はちょこっと試行錯誤してダメだったのですぐに諦め。根気よく調整すれば表示できるかもです。

で、調査結果を見てみます。
Imaging Edge Webcam を使うと、11フレーム(= 367ms)も遅延が発生します。Imaging Edge Webcam は映像のみなので、別に用意した音声とリップシンクさせるためには、配信ソフト側に音声を遅延させる処理が必須ですね。
HDMIの 60pでは 3フレーム(= 100ms)という優秀(?)な数値を出してますな。この程度なら音声を遅延させなくても、さほど違和感は無いと思います。HDMIでは映像だけでなくカメラ内蔵マイクの音も送り込めるので、その音声を使うなら、そもそも遅延処理は不要ですね。


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